3Dスキャナー（非接触測定機）で測定したデータ（点群、ポリゴン）データから、CADで使える形状データを作る、リバースエンジニアリング技術の概容を紹介します。

測定点群からCAD形状を作成する（リバースエンジニアリング）イメージ

リバースエンジニアリングのイメージは以下になります。

点群データ

3D空間座標位置情報（x,y,z）を持った点情報の集まりです。
最近は物体の表面の色彩をRGB座標で表現して色情報も付加されているものもあります。

ポリゴンデータ

ポリゴン＝多角形を意味し、リバースエンジニアリングソフトでは三角形ポリゴン（頂点三点の平面）で表現します。
点群データからポリゴンデータを作成します。ポリゴン作成時に許容誤差値を少なくすると、細かいポリゴンが作成され、許容誤差を大きくすると、ポリゴンのサイズが大きくなる傾向があります。
一般的に、点群データよりも頂点数が少なくなるので、ポリゴンデータは点群データよりデータ容量が少なくなります。
3Dスキャナー非接触測定機側のソフトウェアで点群データからポリゴンデータの作成をすることもあります。

CAD（キャド）データ

CADは、「Computer Aided Design」の略で、和訳では「コンピューター支援設計」です。
CADデータはコンピューターを利用して作図するシステムで作成したデジタルデータです。
CADデータは「2D CADデータ」「3D CADデータ」の2つに分けることができます。
「2D CADデータ」は2次元で形状を作図したデータで、「3D CADデータ」は、3次元の立体形状を作図したデータです。
リバースエンジニアリングソフトでは、ポリゴンデータは3D形状データなので、「3D CADデータ」として作成することが多いのですが、ポリゴンデータの外周シルエットを平面上に投影した2Dライン情報や断面で作成した2D断面線情報から「2D CADデータ」の作成も可能です。

大量の点群データは要素数やデータ容量が多く、そのままでは一般的なCADシステムに読み込みができない場合があります。そのため、いったんリバースエンジニアリングソフトにて、点群データやポリゴンデータから曲線、曲面を作成し、CADシステムで読み込みができるCAD標準フォーマットとして出力します。
出力した曲線、曲面のCADデータは、一般的なCADシステムで読み込みが可能で、CAD設計などで活用できるようになります。

リバースエンジニアリングの手法

リバースエンジニアリング手法は大まかに下記の3Typeに分けられます。
リバースエンジニアリングで作成したCADデータをその後どのような用途、システムで使用したいか？で手法を選択します。

Auto Surface

長所

一般的にリバース時間が短い
複雑な自由曲面形状を簡単に作成できる
ポリゴンとリバース面の誤差が少ない（角部には誤差が発生しやすい）
自動面作成も可能（ただし複雑な形状の自動作成は困難）　　

短所

ポリゴンの形状に影響されるので、穴や凹凸形状が多いとポリゴン編集に時間がかかる傾向がある。
４辺で構成する曲面群を作成し、一般的なCAD面構成ではないため、CADでの編集は困難。

適用例

基本的には、リバースCAD面を編集しないでそのまま使用できる業務に使用する。
・工芸品、医療関係のリバース
・3Dプリンター用のモデル作成

また、とりあえずCAD面化をしたい場合に使用する。（後工程の別のCADで再度モデリングが必要）
・検査部署で測定、リバース業務を担当していてリバースに工数がかけられない場合
・簡易的にCAD面化して、後工程モデリング部署に渡す
・工業試験場等公設試での簡易リバース方法として使用されていることが多い

Surface Modeling

長所

CADモデリング時と同等の面構成で作成できる（基本面、フィレット）
リバースした面をCADシステムで形状見込み修正、変更などが可能
ポリゴンとの誤差を考慮（指定）したリバース面の作成が可能　　

短所

リバース面作成に時間がかかる傾向（高機能化、操作性向上により工数削減が進んでいる）
面構成を判断するモデリングのスキルが必要（自動で判断できる仕組みの開発が進んでいる）　　　

適用例

リバースした形状をCAD設計、CAM（NC加工）データ作成、CAE解析業務で使用
自動車（2輪、4輪）関連の部品・金型などの自由曲面形状が多いリバース業務
自動車（2輪、4輪）のデザインクレーモデルのリバース業務

Solid Modeling

長所

CADモデリング時と同等の面構成で作成できる
リバースした面をCADシステムで形状見込み修正、変更などが可能
寸法を指定したプリミティブ要素（平面、円柱、円錐）でのリバース面の作成が可能
2D形状線から押し出し、回転などの機能で簡単に3Dリバース面が作成できる

短所

ポリゴンとの誤差が発生しやすい
自由曲面形状の再現が難しい
リバース面作成に時間がかかる傾向がある
（リバース時間比較：【Auto Surface】＜【Solid Modeling】＜【Surface Modeling】）
面構成を判断するモデリングのスキルが必要

適用例

リバースした形状をCAD設計で寸法入力、図面化したい場合
鋳造（ダイキャスト）、鍛造、樹脂製品でソリッド形状が多いリバース業務