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IGESとは?

IGES(アイジェス)は、様々なCAD/CAMシステム間において、CADデータ変換を行うための中間ファイルの一つです。1981年にANSI(米国国家規格協会)の規格として承認され、1996年のIGES 5.3 をもって最終版となりました。2000年頃にはオプション扱いのCADシステムもありましたが、現在ではほとんどのCADシステムに標準実装されています。
IGES:Initial Graphics Exchange Specificationの略
ANSI:American National Standard Instituteの略

IGESファイルの構成

IGESファイルは全体が5つのセクションで構成されており、1行80文字固定のテキストファイルです。そのため、テキストエディター(メモ帳…)で開くと、中身を確認することができます。
73文字目が “S”, “G”, “D”, “P”, “T” のいずれかにより、どのセクションなのかを判定できます。

セクション名説明行数
スタートセクション開始部:コメント文n行
グローバルセクションIGESファイルを出力したCADシステムの重要な情報(精度・単位・バージョン等)n行
ディレクトリセクションデータ(図形要素)の属性情報(色・レイヤ・フォーム等)1要素を2行で定義
パラメータセクションデータ(図形要素)の座標値・数式等n行
ターミネートセクション終了部:各セクションの行数1行

重要な情報

IGESファイルのグローバルセクションには様々な情報が記載されています。その中でも特に押さえておきたい情報は、「Native System ID」と「Units Name」です。「Native System ID」はIGESファイルを出力したCADシステムの名前が、「Units Name」にはIGESファイルの単位が記載されています。


これは、「CATIA_data.igs」というファイルをテキストエディタで開いた画面の先頭部分です。
グローバルセクションは全部で4行あることがわかります。(73文字目が “G” となっている行)
グローバルセクションは25個のパラメータが順に記載されており、「Native System ID」は5番目に記載されています。(上記の赤線部分:62HDASSAULT SYSTEMES CATIA Version 5-6 Release 2021 – www.3ds.com)

62Hというのは、Hの後に62文字で記載していることを意味しています。つまり、「Native System ID」は
「DASSAULT SYSTEMES CATIA Version 5-6 Release 2021 – www.3ds.com」ということになりますので、CATIA V5-6R2021(通称=R31)から出力されたIGESファイルであることがわかります。

同様に、15番目には「Units Name」が記載されています。(上記の青線部分:2HIN)
2HはHの後に2文字で記載していることを意味しています。つまり、「Units Name」は「IN」ということになりますので、単位はインチであることがわかります。

ちなみに、「Units Name」の仕様は以下の通りです。

ValueModel Units
2HIN or 4HINCHInches
2HMMMillimeters
2HFTFeet
2HMIMiles
1HMMeters
2HKMKilometers
3HMILMils (i.e., 0.001 inch)
2HUMMicrons
2HCMCentimeters
3HUINMicroinches

IGESファイルをテキストエディタで開くと、15番目の「Units Name」はどこに記載されているかを探すのは大変です。

spGateにはログ表示機能がありますので、IGESファイルをインポートした直後にログ表示アイコンをクリックすると、下記のように整理された状態で重要な情報を素早く確認できます。

IGES図形要素一覧

IGESでは、要素番号(Entity Number)で図形要素を定義しています。(例:円弧=100、直線=110、トリム面=144…)

IGES図形要素一覧を表示する(クリックで開閉します)

Entity NoFormEntity Type
0NULL
100Circular Arc
102Composite Curve
1040Conic Arc
1Conic Arc
(Parent conic curve is an ellipse)
2Conic Arc
(Parent conic curve is an hyperbola)
3Conic Arc
(Parent conic curve is an parabola)
1061Copious Data (2D)
2Copious Data (3D)
3Copious Data (3D) with Vectors
11Linear Path (2D)
12Linear Path (3D)
13Linear Path (3D) with Vectors
20-21Centerline Entity
31Section Entity
32-38Section Entity
40Witness Line Entity
63Simple Closed Planer Curve
108-1Plane (bounded)
0Plane (unbounded)
1Plane (bounded)
1100Line
1-2Line
112Parametric Spline Curve
114Parametric Spline Surface
116Point
1180Ruled Surface
1
120Surface of Revolution
122Tabulated Cylinder
123Direction
1240Transformation Matrix
1,10-12
1250-4Flash
1260Rational B-Spline Curve
1-5
1280Rational B-Spline Surface
1-9
130Offset Curve
132Connect Point
134Node
136Finite Element
138Nodal Displacement and Rotation
140Offset Surface
141Boundary
142Curve on a Parametric Surface
143Bounded Surface
144Trimmed Surface
146Nodal Results
148Element Results
150Block
152Right Angular Wedge
154Right Circular Cylinder
156Right Circular Cone Frustum
158Sphere
160Torus
1620-1Solid of Revolution
164Solid of Linear Extrusion
168Ellipsoid
1800-1Boolean Tree
182Selected Component
1840-1Solid Assembly
186Manifold Solid B-Rep Object
1900UnParameterized Surface Plane
1Parameterized Surface Plane
1920UnParameterized Right Circular Cylinder Surface
1Parameterized Right Circular Cylinder Surface
1940UnParameterized Right Circular Conical Surface
1Parameterized Right Circular Conical Surface
1960Unparameterized Spherical Surface
1Parameterized Spherical Surface
1980-1Toroidal Surface
202Angular Dimension
204Curve Dimension
206Diameter Dimension
208Flag Note
210General Label
2120-8,100-102,105General Note
213New General Note
2141-2Label (Arrow)
2160-2Linear Dimension
2180-1Ordinate Dimension
220Point Dimension
2220-1Radius Dimension
2280-3General Symbol
2300-1Sectioned Area
302Associativity Definition
3041-2Line Font Definition
306MACRO Definition
308Subfigure Definition
310Text Font Definition
3120-1Text Display Template
314Color Definition
316Units Data
320Network Subfigure Definition
3220-2Attribute Table Definition
4021Group Associativity
3Views Visible Associativity
4Views Visible,Color Line Weight Associativity
5Entity Label Display Associativity
7Group Without Back Pointers Associativity
9,12-16,18-21Single Parent Associativity
… Dimensioned Geometry Associativity
4040-1Drawing Entity
4061-3,5-14Definition Levels Property
… Flow Line Specification Property
15Name Property
16Drawing Size Property
17-36Drawing Units Property … Directory
408Singular Subfigure Instance
4100View
1Perspective View Entity
412Rectangular Array Subfigure Instance
414Circular Array Subfigure Instance
4160-4External Reference
418Nodal Load/Constraint
420Network Subfigure Instance
4220-1Attribute Table Instance
4300-1Solid Instance
5021Vertex
5041Edge
5080-1Loop
5101Face
5141-2Shell

IGESにおける曲面要素とソリッド定義

先ほどの図形要素の中から、主な曲面要素をピックアップしてみます。

Entity NoEntity Type
108Plane
114Parametric Spline Surface
118Ruled Surface
120Surface of Revolution
122Tabulated Cylinder
128Rational B-Spline Surface
140Offset Surface
143Bounded Surface
144Trimmed Surface
154Right Circular Cylinder
186Manifold Solid B-Rep Object

一般的に3Dの曲面データをIGES出力する場合には、

①143:Bounded Surface
②144:Trimmed Surface
③186:Manifold Solid B-Rep Object

のいずれかで出力されます。

①と②は面と面のつながり情報(位相構造・トポロジー)がありませんので、バラバラの面群データです。
CADシステムによってディフォルト(初期設定)は①か②のどちらかになっており、システムによっては設定で切り替えることも可能です。

③は面と面のつながり情報がありますので、ソリッド形状やシート形状を表現できます。

主要CADのIGES出力

CATIAやSOLIDWORKSなど、主要なCADシステムにおけるIGES出力を調べてみました。

システム名バージョン出力
143:Bounded Surface144:Trimmed Surface186:Manifold Solid B-Rep Object
CATIAVersion 5-6
Release 2020
-
(default)

(手動切替)
NX1872-
(default)
-
CreoParametric 6.0.2.0
(手動切替)

(手動切替)

(手動切替)
SOLIDWORKS2020
(手動切替)

(default)

(手動切替)
CADMeister2020-
(default)
-
CAM-TOOL17.1-
(default)
-
Rhinoceros7
(default)

(手動切替)
-
spGate2021.2
(手動切替)

(default)

(手動切替)

トリム面(144:Trimmed Surface)の内部構造

主要CADのIGES出力で記載した上表からもわかるように、多くのCADがdefaultで出力している曲面の表現はトリム面(144:Trimmed Surface)です。このトリム面定義は、IGESファイルの中では、大きく3つの要素で構成されています。

赤文字はJAMA(Japan Automobile Manufacturers Association:日本自動車工業会)、JAPIA(Japan Auto Parts Industries Association:日本自動車部品工業会)発行のPDQ(Product Data Quality:モデルデータ品質)ガイドラインで使用している用語。

IGESデータの行数制限

冒頭で説明しましたとおり、IGESは全体が5つのセクションで構成されています。そのうち、スタートセクション・グローバルセクション・ターミネートセクションは、行数制限が問題になることはありません。

しかしながら、ディレクトリセクション・パラメータセクションは、CADデータの要素数(特に面数)に比例して行数が多くなってしまいます。IGESの各行はIDで管理されており、その管理番号は7桁しかありません。つまり、最大でも9,999,999行までしか表現できません。

昔は面数の多いCADモデルは少なかったのでIGESデータの限界が問題になることは多くありませんでした。しかしながら、最近はPC環境やCADシステムの進化により、大容量のCADモデルも増えてきました。そのため、7桁では管理できないケースが出てきています。

限界を超えたIGESデータを読み込んでも、エラー・面欠け・不正表示など、受け取るCADシステムにより様々な不具合が発生します。

上限を超えていないIGESデータ例

上限を超えたIGESデータ例

spGateで大容量IGESの最終5行を確認した例

パラメータセクションは全部で12,685,420行(8桁)あるのですが、実際のIGESファイルには
8桁表現できませんので、2,685,420行(7桁)で終わっています。

残念ながら、このような不正IGESファイルを修復することはできません。しかし、IGESファイルの最終行付近を確認することで、「限界を超えた不正データである」ということがわかります。データ入手元に説明し、要素数を減らして複数のIGESファイルで再度出力を依頼したり、別のフォーマットで出力を依頼するなどの対策が必要です。

JAMA-ISとは?

JAMA-IS(ジャマ アイジェス)とは、Japan Automobile Manufacturers Association Iges Subset の略で、IGESのサブセット(部分集合)です。

1993年から、日本自動車工業会 CADデータ交換 標準化ワーキンググループが主導して仕様を策定しました。(参加企業:ほとんどの国産自動車メーカー)
当時は3次元CADの普及期で、国産自動車メーカーは、オリジナルの自社CADを開発していました。しかし、IGESの対応状況は自動車メーカーによって異なり、3次元CADデータの授受には問題が山積していました。そのため、まずは3次元CAD形状をなんとか受け渡すために、対応要素を自由曲面に限定しました。フルセットのIGESには約80種類の定義がありますが、サブセットのJAMA-ISは33種類に限定されています。
3次元CADデータ変換で難しいのは、円柱・球などの幾何曲面(プリミティブ)ですので、自由曲面に絞ったJAMA-ISでは、変換率が大幅に向上しました。

現在のCADシステムにおけるJAMA-ISオプション設定例

CATIA
曲線およびサーフェスタイプ=標準  →IGES
曲線およびサーフェスタイプ=Bスプライン →JAMA-IS

NX
□日本自動車工業会規格準拠(JAMA) →チェックボックスON=JAMA-IS

spGate
□JAMA-IS →チェックボックスON=JAMA-IS

JAMA-ISの注意点

JAMA-ISでデータ変換した場合、自由曲面データなので(円柱・円錐などの幾何曲面は含まない)、変換そのもののトラブルは激減します。しかしながら、受け取った後工程で円柱として扱いたい場合には、問題が発生します。例えば、あるCAMシステムでJAMA-ISで形状データを受け取った後に、穴加工を行うと仮定します。見た目は円柱形状ですが、中身は自由曲面なので、CAMシステムとして穴の認識ができません。また、半径値を確認したくても確認できないこともあります。

このような場合には、spGateで自由曲面を円柱・円錐に近似変換する必要があります。

幾何曲面近似・幾何曲線近似することで、穴を認識したり、半径値の確認が可能になります。

tag : IGES