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活用例

[鍛造金型の場合] 老朽鍛造金型の再生

型鍛造では加工の際に強い圧力がかかる関係で金型の老朽化やそれに伴う破損が起こりやすく、安定した量産のためには金型破損時の対応策が重要です。今回は破損した鍛造金型の復元・作成へ、リバースエンジニアリングを活用した例をご紹介します。

鍛造金型の破損リスク

鍛造金型は加工の際に非常に強い圧力がかかるため、加工方法によっては破損が起こりやすいです。量産中の金型が破損してしまった場合は、早期に修復をしなければ生産がストップしてしまいます。そのため、直ちに仮対策で修正を行うことで、できるだけ早く量産を再開することが考えられます。しかし、先述のように加工時の負荷が強い鍛造金型の場合は、部分的な修正では耐久性が足りずに再破損するリスクが高くなります。

破損と修正を短期間で繰り返すことなく安定した量産を継続するためには、早期に金型を復元・作成することが必要です。

リバースエンジニアリング技術で破損金型の復元

破損した金型を再作成する際、設計CADデータなどで量産中の金型の3DCADデータがあればそれを元に金型を作成することができます。
しかし、特に古い金型では設計CADデータがない場合や、設計CADデータがあっても金型作成時に手作業で調整した形状が反映されていないことがあります。その場合は一から金型を作成し、手作業で加工した部分の調整も再度やり直すことになるため時間も手間もかかります。

このような場合には、点群からのリバースエンジニアリング技術の適用が効果的です。
まずは緊急対策で修復された金型を非接触測定機で測定して、点群/STLデータを取得します。設計CADデータがある場合は次にこの量産金型形状の測定点群と、初期設計段階のCADデータを使って、2つのデータの間の誤差を確認します。そして、修復が必要な箇所のみCAD面を作り替える手法「部分リバース」を行い、修正用のCADデータを作成します。
設計CADデータがない場合は、測定した点群/STLデータを元にspScanで金型全体をリバースしてCADデータを作成します。

状況に応じたリバース方法で効率的に金型を復元

前述のように、破損などにより金型の復元が必要な状況ではリバースが有効と言えますが、実際に現状の金型からリバースを行うことが難しい場面もあります。例えば鍛造金型では、割れやクラックなどの破損の他に加工時にかかる圧力の影響で金型の表面がボロボロになるなど、様々な形状の変化が考えられます。金型破損時に仮修正した金型のSTLデータからリバースを行う際、取得したSTLデータにはそうした金型の形状変化もそのまま反映されます。このような状況では、STLデータをそのままリバースしただけでは金型の修正に適したCADデータにならないため、劣化などで生じた形状の変化も考慮してCADデータ化する必要があります。

上記のような場合には、spScanを活用したリバースが有効です。
spScanではリバース面の精度と品質のコントロールが容易なため、STLデータの状態を考慮して用途に適したCADデータを作成できます。手作業による加工部分がある金型の場合、手作業の部分は精度を優先してそのままの状態を反映し、劣化や摩耗で形状の変化などがある部分は品質を優先して元の形状を再現する、というような作り分けが可能です。
これにより、STLの状態を「あるがまま」CAD化するだけではなく、リバース対象の状態やリバース後の目的等に応じて「あるべき」形状を再現して、必要なCADデータをより効率的に作成できます。

40年前の鍛造金型入子:経年変形、形状に凹凸あり

⇩リバース

リバースCAD:必要な形状は精度を優先してリバースし、
形状の凹凸などは修正して元の状態を再現
(リバース工数=16H)

また、破損に備えて量産中の金型をあらかじめリバースして3DCADデータ化しておくことで、実際に金型が破損した際により迅速に対応することもできるようになります。

金型のメンテナンスや破損時の対応で課題を感じることがありましたら、spScanを活用したリバース技術の適用をご検討いただくのも良いのではないでしょうか?

tag : 金型リバース 点群データのCAD化